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東京貧困女子。―彼女たちはなぜ躓いたのか

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著者: 中村 淳彦

出版社: 東洋経済新報社

 「無駄遣いしないし、何も欲しいものはない。部活をやって大学を留年しないで無事に卒業したいだけです」。ある国立大学医学部の現役女子大生の言葉である。しかし、貧困生活のため、風俗や売春をしている。あなたは彼女にどういう感情を抱くだろうか。「部活をやめて普通のバイトをすればいい」、「貧困は自己責任」といったことを思うだろうか。本書を読了する前の私もそのような短絡的な感情を持っていたように思う。
 本書は東洋経済オンラインで連載していた「貧困に喘ぐ女性の現実」を基に書かれている。本書では女性、特に単身女性とシングルマザーの貧困問題を考えるために総論ではなく個人の物語に焦点をあてて紹介している。冒頭は、女子大生の貧困についてであるが、親が低収入で支援がなく、奨学金で学費は工面するものの、学業が忙しくて通常のバイトだけでは学生生活では成り立たない、典型的な学生貧困である。彼女が特別ではなく、このような貧困はありふれている。学歴は関係なく、早慶上智といった学生で真面目よりな普通の女子大生も性を売っている。女子大生が風俗や売春をすると、上から目線で誹謗中傷になるが、本当の問題はそこではない。自らの体を売るという望まない選択をしなければ、学生生活が成り立たないという環境に目を向けるべきである。奨学金制度が貸与型ではなく、給付型であれば学業に専念できるし、そもそも彼女たちを必要とする中高年層がいなくなれば成立しなくなる。そういった当たり前のことが、豊かに育ってきた世代には理解できていないのかもしれない。
 「貧困は犯罪と売春に直結」とあるように、コロナ不況でこのような状況が拡大することはおそらく間違いないだろう。彼女のようなひとをひとりでも作らないためにコロナが早く終息すること、そして国の政策で貧困を救ってくれるように願う。

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written by 左利きは僕のあこがれ